4 年前、私は大学卒業と同時に練馬和光保育園に入職しました。これから、今の私の生きていく上での軸を形成した言葉を2 つお話しします。入職した当時、浄土真宗の勉強会に参加させていただき、最後の座談会で「これからは園児たちに浄土真宗の教えというものを教えていきたい」と私は今後の抱負を発表しました。しかし、その際に講師の方から言われた一言が、私の真宗の学びに対する指針となったと鮮明に覚えています。
その方がその時言ったことは「教えるのではなく、伝えていくというのが健全なんじゃないでしょうか。」というものでした。私は真宗の教えを学んでいくうちに知識が先行して無意識のうちに自分が「教える」立場だと勘違いしていました。しかし、その一言で「教える」のではなく「伝え、そして共に学ぶ」ということに気づかされました。
その後も日々の保育園での生活をしていく中で、学ぶことばかりです。最近の園児の中には3 歳の段階で塾や、体操教室に通ったりと、習い事をしている子が多くいます。楽しく習い事をしている子もいれば、中には話しているとあまり楽しくやっていない子もいます。もちろん、こどもが興味を持つきっかけとしてはいいですし、それを否定しているわけではありません。ただ、そこで思ったのが、園長が入職した際に掛けていただいた言葉で「オギャーと言って生まれた瞬間から意思を持っているんだよ」というものです。
こどもたちの日々の成長を見るだけでも、一人ひとりの成長の違い、一人ひとりに対する保育の多様性、一人ひとりの自分の意志、一つとして同じものはなく、それらすべてに対して自分は「先生という教えていく立場」ではなく「そこから共に学び、共に
育つ」ということに気づき学ばせていただいていると感じています。
これからも「共に学び、共に育つ」ということを念頭に置き、様々な出遇いを大切にする保育園を目指していきたいと思います。
『Network9(2023年6月号)より引用』井口 弘寿(練馬和光保育園 副園長)