【特集】「そもそも自分って本当に正しいのか」(1)・(2)・(3)インタビュー記事に引き続き、『Network9』2023年7月号~2024年6月号の1年間にわたり、毎号の表紙を飾った写真に込められた気持ち「エッセイ」を写真と共に2回にわたって紹介するページ(4)・(5)となります。
藤森さんは写真に一言を添えた詩集『いろいろ問うてみる』(文芸社)を2021年に自費出版されており、シンプルでまっすぐな言葉と写真は読者に様々な思いを想起させます。
主にインドでの旅先で撮られた何気ない写真からは、欲望渦巻く現代社会で悩む私たちの課題を浮き彫りにしているように感じました。
今回の特集では、藤森さんがどのような縁で写真集を出そうと思ったのか、また旅先での出来事から自分自身が問われていることは何だったのかなどをお話いただきました。『Network9』2023年7月号より引用
藤森 和貴氏(東京7組 常願寺住職)
1986年、東京都文京区生まれ
初めて訪れた国インドに魅了され写真を撮り始める
主著に写真エッセイ集『いろいろ問うてみる』(文芸社)がある。

―毎号の表紙を飾った「写真」と気持ち「エッセイ」 後編―
「たまたまの人生。」

異国を歩いていると、私は今なぜこの場所に立っているのかと思うことがある。この場所にいるのは私の選択だったのだろうか。
また、旅をしていると、当初予定していた場所とは全く異なる場所にいることがある。その道中で起こる様々な出会いによって、いつの間にかその場所に導かれている。予定通りに進まないことばかりだし、だからこそ楽しいのかもしれない。時には腹も立つが。
たまたま生まれて、たまたま死んでいく。たまたまということは私の思いを超えて在るということであろう。私の選択だと思っていたことも、実は、その時その時の出会いによってそうなっている。
「一人で旅して気がつきました。一人で旅してなかったことに。」

初めて一人で訪れた国、カンボジア。右も左もわからなかったが、若さゆえの勢いにまかせて日本を飛び出したことを覚えている。滞在中は、次から次にアクシデントが襲いかかってきた。最初は無事に帰ることができるだろうか。そんなことばかり心配していたが、なんとかなった。そしてその経験が、今では大変貴重な財産となっている。これを機に、その後色んな国に行った。そして思った。
一人で旅して気がつきました。一人で旅してなかったことに。振り返ってみてそう思う。一人で歩んでいたつもりでも、そこには必ず誰かがいた。一人で生きていたつもりでも、そこには必ず誰かがいた。
「一生不完全。」

人間どこか欠けている。完璧な人間などいない。自分もそう。色んな間違いをする。だけどそこには目がいかない。よく見えるのは人の欠点ばかり。あいつのせい、こいつのせいと、言ってる自分は何様なのか。そもそも完璧ってなんだろう。欠点ってなんだろう。
「自分のこと偉いと思っているんだろ! 自分はただの人間だ!」
近所の公園にいたら、そんな声が聞こえてきた。声の方向に目をやると、小学校中学年くらいの女の子が、少し年下の男の子に怒っている。なんで怒っているのかはわからなかったが、自分に言われている気がしてドキッとした。
「異常、異常っていうけれど、そんな私は正常なのか。」

ある日、渋谷の街中を歩いてたら、下向きに咲いている花を見つけた。変わった花だなと思い一枚パシャリ。それと同時に思った。この花は本当に変わった花なのだろうか。
人間は、自分では計りきれないものと対峙した時に、変だとか、おかしいだとか、異常だとかその言葉の裏を返せば、自分は正常だと言っているようなもの。本当にそうなのか。
花は、その花のままに生きていた。ただそれだけのことなのだ。そこに難癖をつけるのは、恐らく人間だけだろう。私自身、花は上を向いて咲くものと勝手に思い込んでいたにすぎなかった。そんな自分の妄想を砕いてくれた大切な出会いであった。世の中、色んなところから自分が問われている。
「歩けば必ず何かとぶつかる。」

歩く、歩く、とにかく歩く。犬も歩けば棒に当たる、と言われるように、歩けば必ず何かと出会う。
インド、マドゥライ。宿を出て、この辺りでは有名なヒンドゥー寺院を目指していた。いつもならすぐに捕まるオートリキシャーも、この日ばかりはなぜか捕まらない。仕方なく数キロの距離を歩いて向かうことにした。
しばらく歩いていると、向こうから小太鼓と爆音を鳴らしながら大集団が迫ってくる。その光景に見とれていると、集団の一人が「こっちに来い!」と手招きしてくる。言われるままにその集団に着いていくと、そこは結婚式場であった。そのまま一緒に参加する。結婚式と言っても堅苦しいものではなく、踊って騒いで、祝福する。その後は南インド特有のカレー(バナナの葉っぱの上に乗せたもの)までいただいた。
目的地は、出会いによって変更する。あの時リキシャーに乗れなくて本当に良かったなと思った。
「私とは不思議の集まりである。」

不思議なご縁の連続により、今の私が在る。よく、あの時こうしていればとか、違う道を辿っていればとか、思うことも少々あるが、自分の歴史のどこを切り取っても今の自分はなくなってしまう。仏法を学び始めたこと、インドに行き始めたこと、写真を撮り始めたこと・・・私の選択と思っていたこともそうではなく、数多くの出会いの中で、私にそういう思いが起こってきたのだ。
一年間という限られた時間ではありましたが、このような機会をいただきありがとうございました。改めて、今まで撮ってきた写真や言葉と向き合う中で、当時の情景を思い出したり、その時とはまた違う見え方がしたりなど、新たな発見の連続でした。これからも、その時その時出てきた感情、出会いを大切にしていきたいなと思います。
『いろいろ問うてみる』著書

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