最近、ちょっとしたことでイライラしてしまう…。家族との言い合いもしばしば。そして、疲弊していく。なぜかと考えると、自分の思った通りにいかないことに最大の原因がある。時間がたって、冷静になれば、申し訳ないという気持ちになるが、相手との関係の修復には時間がかかってしまう。
言い合いをしてしまう原因として、「言葉のすれ違い」ということがあるように思える。私は相手の思いを100%受け取ることができないし、相手に私の思いを100%受け取ってもらうこともできない。なぜなら、お互いがその人自身にはなれないからだ。
例えば、こちらから伝えたい真意が、相手に70%くらいは伝わったかなと思っていても、それは自分の思いの尺度での判断で、相手には10%も伝わっていないということも起こりうる。もちろんその逆のパターンもある。自分の尺度と相手の尺度が同じだと思ってお互いが言葉を交わしているかぎり、すれ違いが生じるのは当然のことなのかもしれない。
そのすれ違いを解消しようと、相手を慮り、相手にとって良かれと思って発した言葉が、相手にとっては、迷惑になったり、意味が通じず、感情を逆なですることになってしまう場合もある。結局は、相手を慮ると言いながら、自分の思いを言葉として相手に押し付けているだけなのだろう。
人間に言葉があるということは、言葉を受け止めてくれる相手がいるということであり、一人であれば、言葉はいらないのかもしれない。言い合いも相手がいなければできないのである。
これから先も、言い合いをなくすことはできないかもしれないが、お互いの言葉を「聞き合う」という時間を持つことで、言葉が通じ合う関係が築かれていくのではないかと考えている。
『Network9(2023年2月号)より引用』佐々木 弘明(東京教務所非常勤教区雇員)