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When the night has come and the land is dark
And the moon is the only light will see
No I won’t be afraid No I won’t be afraid
Just as long as you stand, Stand by me
(“Stand by me” J.Lennon)
夜が垂れ込めてあたりが暗くなっても、月の光だけが輝いていても、ぼくはちっとも恐くない。
君がそばに寄り添ってるだけで、ぼくは強くなれるんだ。
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タイトルは「ビートルズな言葉」(へんな日本語)である。しかし“Stand by me”はジョン・レノンが歌っているがビートルズの曲ではない。ジョン・レノンが歌ったので「ビートルズな言葉」に入れることとする。しかもカバーだ。ベンE・キングというオールディーズな人の作詞作曲である。うんと拡大解釈、独断偏見であるがご容赦あれ。何故そこまで拡大解釈したか。
それは松田悠八さんという人が書いた「長良川 ―スタンドバイミー1950―」という本のせいだ。
岐阜の長良川が舞台となった、美濃弁いっぱいの少年達の物語。サブタイトルに「スタンドバイミー1950」とあるのは、ロブ・ライナー監督によるアメリカ映画「スタンドバイミー」の美濃版として松田さんがこの物語を書いたからに違いない。長良川のまわりで育った少年達の目に映った「死」が様々なエピソードに彩られながら描かれる。
物語には夜があふれている。智恵を働かせてうごめきながら、かつ闊達に活動した少年時代の思い出が金華山や長良川の風景の中に浮かんでくる。友達がいたから夜にも闇にも、死という現実にも勇気をもって立ち向かえた。互いに影響しあいながら、その土地の文化に支えられながら、少年から青年へと引きずり上がっていく人間関係の濃密さは、むせかえる草の匂いのようだ。そして、その文化の一端に、このウエブサイトを運営する真宗大谷派の「念仏文化」も描かれている。縁あってこの1月末、仕事で長良川を訪れた。川から金華山と岐阜城を見上げ、少年達の声を聞こうとして何故かほくそえんだ。
ベンが、ジョンが歌う。「ぼくはちっとも恐くない。君達といっしょだから・・・」
この勇気と信頼を美濃弁でどう言うのか聞いてみたいものである。
自分が中学生の頃、家を抜け出して友達と夜中の町を行くあてもなく自転車で流した。深夜営業の本屋の怪しげな自販機、スナックから響く笑い声、忍び込んだ友だちの部屋の灯油の匂いと温かさ。ワクワクしたもんだ。誰にでもある、親には語れない、好奇心いっぱいでなつかしい自分だけの「スタンドバイミー」。だからベンでもジョンでもどちらでもかまわない。この曲が好きだ。
今の東京は青少年条例で23時以降の18歳以下の外出は、補導と親への注意罰金だ。今の子ども達に「スタンドバイミー」はあるのだろうか。
五島 満(ごしま みつる 東京都世田谷区 浄行寺住職)