聖徳学園の建学の精神は聖徳太子の17条憲法第一条に由来する「和」をかかげています。本園は創立90年の幼稚園で、昨年園舎が新築され、新たな一歩を歩み出しました。
300名近くの園児が高層ビルに元気な声を響かせていますが、子どもたちにとっての「和」とは、どのようなことかについて考えてみたいと思います。
私達は子ども達に「友達と仲良く」「誰とでも仲良く」と求めてしまいますが、子どもたちが友達と仲良しになることはそんなに簡単なことではありません。
3歳児のクラスの入園当初は一人一人が不安でいっぱいで、母親と離れること自体に危機感を感じています。友達の存在は自分には関わりのない状態です。しかし、何日か経つと少し落ち着いて先生のそばにいたり、自分の好きな遊具で遊び始めたりします。この時もまだ自分中心ですが、ふと泣いている子に目が向いて「お母さんに会いたいの」と問いかけたり、自分のハンカチで友達の涙を拭いたりして、関わりのきっかけが生まれ、友達との心の交流が生まれます。物の取り合いなどの喧嘩が4,5歳になると自分の考えを主張することによる喧嘩に変化していきます。
それぞれの子どもが自分の感じ方、考え方を相手に伝え、お互いに受け止めることにより、自分とは違う感じ方や新たなものの見方を学び、自分の世界を広げていきます。そして、相手の良さや自分の良さに気付き、課題や問題に直面したときに協力したり、相手を思いやったりできるようになっていきます。
「和」とは表面的な「なかよし」ではなく、深く相手を理解することではないでしょうか。幼稚園での生活が友達との関わりが深められるよう、子どもたちの主体的な遊びを大切にしていき、教師自身も幼児理解を深めていきたいと思います。
『Network9(2024年4月号)より引用』塩 美佐枝(三田幼稚園 園長)