私は両親がともに公務員の在家に産まれた。実家は真言宗の檀家だったが年1、2回家にお坊さんが来てお経をあげてもらうだけで、結婚前に実家の宗派を確認するまで全く知らなかったくらいに仏教とは縁が無かった。進学した高校と大学は工業系で、両親の職業のこともあり当時から将来は公務員系の仕事に就くのかなと思っており、実際に公務員系の技術職に就くことが出来た。
仕事を始めてからは会社の仕事の進め方と自分が思う正しさに差があることがわかった。会社というより今の社会の仕事の進め方なのかも知れない。仕事を続けるためにはそのやり方に従った方が楽になるとは思いつつも、自分の思う正しさと違う事をするのは非常に苦痛だった。
そう感じているところに配偶者と出会いチャンスだと思った。お寺に入れば正しいものの見方という、漠然としたなにかすごい智恵が身につき、私の抱えていた悩みをさっと解決して、心を楽にしてくれると。しかし、私の中にステレオタイプなお坊さんのイメージがあり、私のような人間が肉やお酒を食べたり飲んだりせず、厳しい修行に耐えられるか非常に心配だった。それらが禁止されていないと聞き、浅はかにもこの宗派の僧侶が自分にも出来るかもと思えるようになった。
真宗に触れてからもう4年になるが、社会人時代に抱えていた問題は解決出来きていない。しかし、自分の思っていた正しさが本当に正しかったのかという疑問が生じたり、問題も解決出来ない、またはしなくてもいい、抱え続けていいのだと思えるようになり、心が少し楽になった。
ただし、真宗の僧侶が自分に出来ているかは甚だ疑問で、そもそもどうやったら僧侶として胸を張って言えるかもわかっていない。答えが無いのかも知れないが、今後の大きな課題として日々を過ごしていきたいと思う。
『Network9(2024年2月号)より引用』須賀 優(東京5組 道教寺)