【特集】「そもそも自分って本当に正しいのか」(1)に引き続きパート(2)となります。
藤森さんは写真に一言を添えた詩集『いろいろ問うてみる』(文芸社)を2021年に自費出版されており、シンプルでまっすぐな言葉と写真は読者に様々な思いを想起させます。
主にインドでの旅先で撮られた何気ない写真からは、欲望渦巻く現代社会で悩む私たちの課題を浮き彫りにしているように感じました。
今回の特集では、藤森さんがどのような縁で写真集を出そうと思ったのか、また旅先での出来事から自分自身が問われていることは何だったのかなどをお話いただきました。『Network9』2023年7月号より引用
藤森 和貴氏(東京7組 常願寺住職)
1986年、東京都文京区生まれ
初めて訪れた国インドに魅了され写真を撮り始める
主著に写真エッセイ集『いろいろ問うてみる』(文芸社)がある。
―出版された写真集の『いろいろ問うてみる』というタイトルはどのような意味を込められたのですか?―
自分が初めて行ったインドで色んな価値観と出会う中で自分の正しさというものを疑うようになりました。そういう意味も含めて写真を通して自分がいろいろ問うているつもりが、最後には自分が問われているということに気が付きました。出遇いによって問いが生まれてくるということを書いたつもりです。この表紙はブッダガヤの前正覚山の近くで撮ったサルです。サルがお互いを見ているのが、お互いを問うているような感じがしたので表紙にしてもらいました。
―写真集の中では動物の写真が多く掲載されていますねー
そうですね。動物から多くの問いをもらっています。
ネズミから私の差別性が問われているように感じることがありました。私はそのネズミが踏み潰されて死んでいるのを、素通りしてしまうところでした。ですが、隣を歩く人は踏みつけられているネズミをみて驚いていました。自分たちの生活も知らず知らずのうちに何かを踏んでいて、踏んでいる側は気づかない。そういうことを感じさせられました。
また、本の中にたくさんのナマズが餌に群がっている写真があるのですが、その写真は欲望というものを表現しようとしました。
また、タイに行ったときに駅のプラットホームで休んでいた私にハエがたかってきました。最初は手で払っていたのですが、それでもたかってくる。そのとき〈生きている〉と感じさせられたのです。求められているというか、欲されているというか。そのとき初めて生きている実感を受けた出来事で、小さないのちから教えられるという思い出があります。日本にいるときはそんなことを考えないのですが、異国に行くと自分を見つめるというか、肌感覚が研ぎ澄まされるような感覚があります。
―写真集には手書きの詩や空白の間のようなページもあるのですねー
印刷の文字だけではなく、敢えて手書きでやらせてくださいとお願いしました。人間の欲望というのでしょうか、足りない足りない、もっともっとと、四方八方からの欲望というものを表現したくて、手書きで色んな方向から「もっと」という言葉を手書きしました。
また言葉では表現できない間のようなものを表現したくて、真っ白なページを途中に入れたかったのですが、それでは印刷ミスだと思われてクレームが来ることがあるらしいのです。だからちょっとでも言葉か何かを入れて欲しいと言われて、アイデアを出してもらい、白い見開きに点をいくつか入れて、間を表現しています。
『いろいろ問うてみる』著書
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