今年は関東大震災から100年という節目の年にあたります。また大震災が発生した9月1日は、「防災の日」と定め災害対策を見直すうえで、大切な機縁となっています。
ここ30余年の間にも、大きな地震が毎年のように発生している日本列島。そして近い将来南海トラフ巨大地震をはじめ、私たちがこれまで直面したことのない大規模な震災が必ず起こるだろうと言われています。
さらには地震だけでなく、温暖化に起因する集中豪雨や大型台風などの深刻な自然災害も枚挙に暇がないほど、全国各地で頻発している状況です。そんな中で、私たちは来たる災害とどう向き合い、どのように備えていけばよいのでしょうか。
そこで「お寺の防災について」をテーマに、真宗大谷派東京教区内部署「同朋社会推進ネットワーク」で様々な社会問題に取り組み活動され、防災に詳しい 星野暁(ほしのさとし)氏(茨城県・浄安寺住職)にお話を伺います。『NetWork9』2023年9月号より引用
実際の活動を通して気づいてきたこと
2007年に発生した新潟県中越沖地震、翌日には現地に向かいました。役場など現地混乱の中、渡された地図を頼りに翌朝、避難所に行くことができました。その2日の間で、大きな地震が起こると橋や道がダメになるとか、水や電気が止まるということを目の当たりにしました。災害直後はこういうことが起こるのだと実感しました。
また、自分のところで災害が起きたときのために何を準備しておくべきか考えました。結局はたいした準備はできていなかったのですが、車のガソリンはなるべく常に満タンでいるよう心掛ける。水や食料もある程度備蓄をする。
まず人に何かをするというよりは、自分や自分の家族を守らなくてはと思ったのです。そういう自助があったうえで、余裕があれば共助となっていくわけですから。
先日、同朋社会推進ネットワークで「災害演習」を開催しました。講師の岸田理 氏(東本願寺ボランティア委員会委員)のお話は非常に有意義で、新しい視点をたくさんいただきました。
その中で「自分を守ったら一人守ったということだよ」と何度もおっしゃられていたことが印象的で、まず自分を助けるのだという視点を忘れていたと気づきました。だからこそ日頃からちょっとした準備と知識と、家族との「こういうときはこうしよう」といった意識共有があれば、自助ということはやりやすいのかなと思います。それができていれば、お寺での共助という形にもなります。また、地域の人たちとのつながりがあれば、共助の輪が広がっていくわけです。お寺というのはそういった可能性があるところなのです。
「※同朋社会推進ネットワーク」
同朋社会推進ネットワークとは、今から20年ほど前に、世に起きる様々な社会問題に対し、迅速に動ける部署が必要との趣旨から、真宗大谷派東京教区内に「同朋社会推進ネットワーク」が立ち上がりました。性差別の問題、非戦平和の問題、それとボランティアの問題を三本柱に3つのチームを作り活動をしてきました。更に、災害や自死の問題もあり、グリーフケアを学ぼうということにもなって現在に至っております。